朱鎔基>温家宝>習近平という政治改革のリレー |
産経矢板記者の荒唐無稽な記事にはいつも吃驚させられるが今回のミスリードはあまりに悪質である。
その記事のタイトルにいわく、<温首相、「遺言」で習路線を批判 改革路線への回帰訴える>だそうである。この記者様は、どうしても習近平を江沢民派と見なし胡温派の対立項として批判したいらしい。
しかし今回の温首相「遺言」とされる政府工作報告に見られるのは、過去五年間経済発展を維持したという自画自賛と、経済発展と環境、社会構造、インフレなどの矛盾を解決できなかったことについての、また政治改革においていたらぬ点があったという自己批判である。
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その報告上の言葉使いは厳しく鋭いが、その矛先はに腐敗の元凶である江沢民とその手下であり一年前に同じ全人代で温自らが激しく批判した薄熙來とその拭い去れない影響と政治勢力に向けられていると考えるのが常識ではないか?
以上貼り付けた動画はその政府工作報告であるが二時間近くあるのですべて見ていただくには及ばない。ただその雰囲気を知ってもらえば充分である。また報告の最期に会場と主席団に向かってお辞儀(鞠躬)をしているのが見ものだろうか。十八党大会での胡錦濤のお辞儀についてもふれたことがあるが、この日本式ともいえる礼はとうとうシナでは慣例となったようである。
それはともかく、この報告に習近平批判を読み取ったという矢板記者の眼鏡の偏光収差には驚くより呆れるばかりだ。
もっとも、習近平を薄熙來と同列の「太子党」と味噌クソに括り、江沢民と一緒に「上海閥」として括れば、まあなんとか習を批判したことになるのであろう。
しかし、昨秋の総書記就任以来、打倒腐敗という名の江沢民派一掃に専念してきた習近平としては苦笑するしかない矢板記者の記事であろう。
さて、温家宝であるが、前任者・朱鎔基の後をついで十年にわたり勤めた総理の職である。そもそも温家宝は朱鎔基が身辺において後継者として育てそして後任として指導部に押し込んだ経緯がある。
その朱鎔基が退任する時は、今回同様に全人大であった。2003年のことである。その際は、万雷の拍手が鳴り止まず閉会の宣告があったのちもまだ続き、朱は再び立ち上がり拍手に応えてお辞儀をしたという。(あいにく、その動画が見つからぬ)
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朱鎔基はなぜそれほどまでに人気を博したのか。
それは彼自身が清官であり貪官たちの腐敗と断固戦い続けたからである。そしてその語り口は親しみ易く官僚臭さがなかったからである。
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シナ語をご存じない一般の方々にはその語気と聴衆の笑いからその諧謔とユーモアを感じていただくしかないが、総理という職務はこの男には適切ではなく総書記、国家主席が相応しかった。しかしその職席は江沢民に占領されていた。このことが中共の腐敗が亢進し国力を削いだことは、我が国にとっては幸いだったこと、これも以前に述べたことである。
しかしそれはシナ国民にとっては不幸であった。
それでも朱鎔基への期待は温家宝に受け継がれそして裏切られ続けた。温の改革を妨害していたのは朱の時と同様に江沢民を頭とする利権集団である。
この中共に巣食う癌をなんとか退治して欲しいというのが、中共統治を受け入れるしかない目下のシナ国民の希望である。
その希望が後継総理でなく党総書記、党軍事委員会主席、そしてまもなく国家主席となる習近平に託されていること、そのシナ国民の民意が、シナに暮らしながら理解できないのが矢板記者である。
記事中連発する「共産党筋」ばかりにリソースをたよらず、虚心坦懐にシナ国民の声に耳を傾けたら如何か?
もっともTPP推進する産経のことであるから、シナ関係においてもその筋からの読者には不透明なお達しがあるのかもしれない。
とすれば会社員としての矢板記者にも同情の余地はあるのだが・・・・・