けっこう根が深そうな馬肉の件 |
川口氏のおしゃべりはいつもどおりまとまりがなく、何が要点なのかさっぱりわからない。
馬肉の件についてもやや誤りがあった。
話は、はスペインの食品工場が、牛肉をキプロスの業者に注文したことから始まる。
キプロスの業者はオランダの同業者にオッファーをもちかけた。
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そのオランダの業者はルーマニアの業者に発注して、牛肉をスペインへドロップシップメントさせた。
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スペインの食品工場はその肉を用いラザーニャを製造し、ルクセンブルクの卸業者に販売した。
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そのルクセンブルクの卸業者が、そのラザーニャを、フランス、英国、ドイツなどへ販売した。
というものである。関係業者はすべてEU域内であるから国内販売と同じであってこの間の関税業務はない。ルーマニアからは直接トラック輸送でスペインまで配達である。
さて問題は、もちろん馬肉を食すのは是か非かの問題ではなく、羊頭狗肉ならぬ牛頭馬肉だったことが問題である。これは商業モラル・商法に関わるもの。
また本日のニュースでは、件の馬肉から大量の薬品が見つかった、ということだ。おそらく屠殺処理された競走馬だったらしくドーピングの残留物らしいのである。これは、食品衛生に関わる問題である。
ここでキーポイントとなっているのはルーマニアである。
以前はEU加盟条件はかなり厳しくスペインなどはEUの前身ECに加盟するのに大変苦労したものだ。
しかし、欧州最貧国といわれるルーマニアとブルガリアはわれわれが知らぬ間に急遽2007年からのEU加盟が決定してしまった。それからすでに6年。
当然のことながら、資本は廉価な労働力を求めて工場を移転し、しかしそんな工場にさえ職を得られぬ貧民は独仏へと移住してきた。
お金持ちクラブのはずだったEUに二つの最貧国がぶら下がったのである。
この両国が加盟したことでEUの定義がより曖昧になった。共同体というよりは帝国の様相がより顕著になったといってよい。帝国辺境地域の細民が食と生活を求めて帝国中心部に集中するのは当然である。
そしてこの帝国内で、今回のようなペテンが堂々とまかりとおり、しかも食品衛生に関しても管理が行き届かないことが明らかになった。ドイツ国民にはとても信じがたい混乱である。
図体の肥大しすぎた帝国の末路というものはおよそ決まっている。
ドイツ第四帝国などドイツ国民は望んでいない。欧州の理想はけっこうではあるが、それがおよそ現実性のない夢想であることが壮大な実験の結果明らかになったのである。
ソ連社会主義連邦共和国という実験も70年を経てひとつの帝国の崩壊で終わった。
EUも、第二次世界大戦の敗戦国ドイツの経済と資源の中心であるわがルール地方を戦勝国が共同管理する欧州石炭鉄鋼共同体にその源泉をたどることが出来る。その条約が締結されたのが1952年、そこから数えてすでに60年である。
欧州中央政府もできないくせに欧州中央銀行を作り、ユーロなどという人工貨幣をでっち上げたり、しかも造幣と金融政策という国家主権を欧州中央銀行に移譲したりなどという異常な実験などは絶対にしてはならなかった、という教訓を人類はまたひとつ学んだのである。
そして実験はもうこりごりである、ということも。