ドイツ納税者二重の敗北 |
この記事を読んで心底からの怒りが湧き上がるのを抑えるのに苦労した。何が「ドイツ二重の勝利」だ!ドイツ資本家とくにグローバル企業や国際金融資本にとっては勝利といえるかも知れないEU拡大とユーロ導入であった。しかしドイツ納税者にとってはドイツ再統一とEU拡大とユーロ導入以来、生活水準と行政サーヴィスの低下、そして治安の悪化と二重以上の敗北が続くのである。
宮下日出男記者様の記事の以下の部分は誤りかあるいはミスリードである。
「ドイツでは経済が好調な一方で、高齢化社会の進展や人口の減少により将来の労働力不足に対する懸念が強まっている。技師や医療・介護、情報技術分野ではすでに労働力不足が指摘されている。」
経済は好調ではない。とくに「ギリシア破綻」以降ユーロ崩壊の懸念によりドイツ国民は買い控えをしており不景気であり倒産する企業も増えている。ソーラー・パネル第一人者であった某社の倒産は2000人規模の失業者を生んだ。
人口減少が問題になったのはEU以前で、とくに95年の域内国境撤廃により人・カネ・モノの移動が自由化されて以来、移民の流入が再びドイツの社会問題となったのである。
また、統計上の失業者は一時の400万人から280万人へと減少しているが、これは失業者の起業を推進する政策が効を奏しているからだ。しかし起業したものの半数近くは失敗して失業者にもどっている。労働力不足は、いわゆる3K仕事に関してでありそれはドイツの高齢化・労働力不足とは無関係である。
ゆえに以下のような部分には、まったく違うぞ、という違和感を覚える。
「欧州債務危機を受けて、輸出大国ドイツはユーロ安を背景にEU域外への輸出を増やしたといわれる。同時に、南欧からの人口流入により国内の労働力不足を補っているドイツは、危機の「二重の勝者」(南ドイツ新聞)とも指摘される。」
欧州債務危機に関してドイツ政府は莫大な財政援助を他国に行っている。それはその実、その国に進出したドイツのグローバル企業や国際金融資本への援助なのだ。そんなことはドイツ納税者はお見通しだ。
また南欧からの人口流入に頼るほど国内の労働力不足しているわけではなく、むしろ彼ら移民がドイツ国民の職を奪っているのだ。これもドイツ納税者の生活実感である。
また、南欧からの人口流入より深刻なのは旧東欧諸国からの移民、とくに旧ユーゴスラヴィア、そして07年よりEU加入を果たしたブルガリア、ルーマニアからの移民である。およそこの両国がEU加盟条件を満たすほどの政治経済状況にあったとは思われず。EU首脳の作為を感じている欧州各国国民である。
当然、この両国から独仏への移民が増加しており、ドイツにおいてもかなり深刻な社会不安をもたらしているのだ。
長くなるので、その一例は次回に述べることにする。