ロシアで殺害された日本人のもっていたカメラ |
なにげなくネットサーフィンしていて目に付いた記事があった。
ザバイカルで殺害された日本人は世界バイク旅行中の写真家
<以下引用>
5月22日にヒロクスキイ地区で殺害された日本人旅行者、大仁田耕一さんは、その所持品などの調査から、経験豊かな旅行者であることが分かった。
現場で見つかった文書類によれば、大仁田さんは1週間前ロシアに入り、東から西に向かっていた。ビザはビジネス用のものだった。
これまで伝えられたように、22日の朝9時、国道「イルクーツク・チタ」線760キロ地点のヒロクスキイ地区で、日本人の他殺死体が発見され、状況から殺人事件として捜査が開始された。
ヒロクスキイ地区警察当局の担当者によれば、被害者の所持品には手が付けられていないものの、金目当ての犯行だったとの見方が現在有力。捜査員らは、近くを通った車に驚いて犯人は何も取らずに逃げたと推測している。
24日までの段階では、日本人旅行者殺害の容疑者は特定されていない。
<引用終了>
この記事には写真が添付されている。
↓
であるからには、このカメラは件の大仁田さんが所持されていたものであろう、と普通は思う。
この写真についての以下のキャプション
© Flickr.com/Khem ☺/cc-by-nc-sa 3.0
を検索してみると
http://www.flickr.com/photos/khem-pravesvuth/5789344390/in/photostream
↑が簡単にみつかった。
しかしこれは、米国在住のタイ人男性のサイトで、「This is my dad's camera.」だそうである。
カメラは、Nikon F3HPでAi Nikkor 50mm, F1.8Sが装着されている。
記事には、このカメラの写真との関連性は一切言及されていない。
事件の経緯とともに不可思議な記事である。
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さてこの事件はいったい日本では「報道」されたのだろうか?
ビジネス用のビザを所有していたからにはプロの写真家だったのだろうか?
グーグルの検索では、引用した<ロシアの声>以外にはシナ語の記事がでてくるばかりである。
これもどうも変だ
と思いながら検索を続けていると
http://hunter-koichi-world.doorblog.jp/
にぶつかった。このブログは
@Hunter_Koichi_5 というTwitterアカウントにリンクされている。
しかし、ブログ、Twitter ともに5月16日で中断している。
そして、なんとFlickrアカウントもおもちだったのであった。
http://www.flickr.com/photos/hunter_koichi/
これが大仁田さんのものであろうことは間違いなかろう。
大仁田さんはFlickrアカウントを今年5月に取得され、数十枚の写真をアップロードされ、最期の一枚がこれである。これもまた5月16日にアップされている。
↓
この写真にはすでに今日現在1798のアクセスがあり、知り合い友人と思われる方々の追悼のコメントがある。
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世界は悪意にみちたフィールドである。ゆえに冒険が成立する。
「今回の移動予定ルートは大まかに、
日本 → ロシア → モンゴル → 中央アジア → ロシア → 北欧 →
東欧 → 西欧 → 北アフリカ → 西アフリカ という感じで予定をしています。
アフリカ地域については、近年のリビア騒乱の余波により情勢不安定な状況が続いている為、
現在のところどうなるかはわかりませんが、とりあえず情報を集めつつ行ける所まで行こうと思っています。早く平和になるのいいのですが。。。」
とブログに記した大仁田さんは、旅のほぼ端緒において思いがけずその人生の旅程そのものを終了させられてしまった。
騒乱のリビアではなく、原油高騰による経済発展に沸くロシアの、そしておそらくはその恩恵にあずかることができないシベリア住民による「狩猟」の餌食になってしまった若い日本同胞がまことに痛ましい。
同じ撮影愛好者としてみると、彼の写真にはポエジーが感じられる。そのポエジーが彼をして今回の冒険に駆り立てたものであろうか。
そして冒険心の薄い臆病者としては、そのあたりがなんとも理解が及ばない。
検索を続けると大仁田さんのポートレートもあった。
自分が30歳の時は上海で遊んでいたことを想い出す。
<ロシアの声>には、遺体引取りにロシアまでおもむかれた耕一さんのご両親についての追いかけ記事もあった。
ザバイカリエ地方で殺害された日本人旅行者の御両親 モスクワに
ご両親のお気持ちはいかばかりであろうか。
耕一さんのご冥福を祈るとともに、ご両親に心の平穏が早く訪れることを願うばかりである。