心の旅、チューリップ |
毒ギョーザ事件もどこ吹く風と、初老の男の甘い回憶が続く。
昭和48年、わたしは故あってヒジョーに寂しかった。
ひとり北陸能登半島をさまよう旅にもでた。
冬の曽々木海岸には荒々しい波がひっきりもなしにうち寄せていた。
しかし、それは東京のさむざむとした風景にくらべて、
どこか人の心に響くぬくもりを秘めていた。
行き場のないとまどいが日本海の沖にどんよりと垂れ込めていた。
わたしは何回目かの禁煙を決意して、
半分ほど残ったショート・ピースの小箱を海へなげすてた。
ひとりの漁師がよってきて、
アンちゃん、どうかしただかや?
とたずねた。
わたしにはその心づかいが身にしみてありがたかった。
きっと自殺志願者に見えたのかもしれない。
そうなのだ、そのとき心の一部はもう死んでしまっていたのだ。
そしていまも、心の旅はつづく・・・・
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